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心はあなたのもとに “I'll always be with you, always”

心はあなたのもとに

大好きな村上龍の新作が出たのを知って、タイトルを見て村上龍っぽくないなと思い、そこに惹かれて即アマゾンで買いました。



内容紹介は文芸春秋、アマゾンウェブサイト等をご参考にしてください。


文芸春秋
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784163300009


アマゾン
http://www.amazon.co.jp/%E5%BF%83%E3%81%AF%E3%81%82%E3%81%AA%E3%81%9F%E3%81%AE%E3%82%82%E3%81%A8%E3%81%AB-%E6%9D%91%E4%B8%8A-%E9%BE%8D/dp/4163300007




これ以降はネタばれになるので、興味があってこれから読みたいと思っている人や、今読んでいる途中の人で、詳しい事を知りたくない人は、この先は読まない方がいいです。




私なりにストーリーを書いてみますと、


西崎ケンジという投資組合を経営する50歳の男性と、
香奈子という30代の女性の恋愛小説です。

ケンジには妻子があります。
愛人も数人います。
香奈子は風俗で働いていたときにケンジと出会います。
ケンジは香奈子のお客でした。
香奈子には離婚歴があり、20代で1型糖尿病を発症し、
血糖値のコントロールがうまくいかないときがあり、
体調をひどく崩したり昏倒したりすることがあります。
病気が原因で、いろいろなことを諦め続けていた香奈子に、
ケンジは目標を持つことをすすめ、香奈子は学校に通い始めます。
家庭と仕事を大切にしつつ、香奈子との関係も深めていくケンジ。
家庭と仕事を優先するため、いつでも会える関係ではありません。

いつのころからか、香奈子からのメールの最後に

「心はあなたのもとに」

の一言が添えられるようになります。

香奈子が原因不明で体調を崩し、
学校に行く事もできない日が続きますが、
ケンジの仕事も忙しくなり、
ケンジと香奈子は会えない日が続きます。

そして、ケンジは香奈子からのメールがしばらく途絶えていることに気づき、
嫌な予感に襲われます。
でも、会いに行く事ができません。

さらにしばらく経ってから、
ケンジのもとに香奈子のメールアドレスから
「姉が亡くなりました」
というメールが届きます。

この小説は、
香奈子が亡くなった後、
ケンジが香奈子とのメールのやり取りを読み返しながら、
二人がどのような関係を築いていったのかを語りながら進んでいきます。




小説の中に、
どんなに大切な人でもずっと一緒にいる事はできない
と書かれています。
ケンジと香奈子の関係が不倫だったからいつも一緒にはいられない、
ということではなく、
家族だとしたって文字通りにずっと一緒にいることは不可能です。


そして私は、
大切な人の生死にかかわることが起こったときに、
その人のそばにいたとしても、
自分にその人の命を救えるとは限らないのだということを、
自分が実際に経験した事の中から思い直しました。


私にとっては、
遠く離れた家族に対してはもちろんのこと、
大好きな友人達にも



心はあなたのもとに




読みたい本がたくさん手元にあるけど、もう一度すぐに読み直したいと思う、切ない恋愛小説でした。




最後に、
この本を読んだ人のレビューを読んでいて、1型糖尿病患者の方が
“この本の冒頭で香奈子が死んだと書かれていて、読む気をそがれた”
と書いているのを読みました。
確かに現実に同じ病気で闘病している方からはそう思われても仕方がないと思います。
でも読み終えてみると、香奈子は自分のアパートで一人でいるときに息を引き取ったので、死因はわからないのです。
そして、亡くなる前に体の不調を訴えているのですが、病院に行っても1型糖尿病の症状だとは考えにくいと診断され、原因がわからないというような事が書かれているので、1型糖尿病と香奈子の死は関連づけられていないのだと私は解釈しています。

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コメント

はじめまして!

私もこの本、読みました。
私は1型糖尿病30年以上の30代の者ですが、この本に書かれていた1型糖尿病についての記述はほぼ正確です。
発症からあまり期間が経っていない患者には理解できない話かもしれませんが、罹病期間が長い私のような患者にとっては、うなずくことばかりでした。
やりたいことがあっても、体調が急に悪くなって何もできなくなってしまって悔しい思いをしたり、低血糖で何度も何度もこん睡状態に陥ったり……。
村上龍さんの取材力と筆力には感服しています。
ただのお涙頂戴の闘病記ではなく、病気を抱えながら生きている香奈子を通して徹底した合理主義の西崎が理屈では割り切れない感情に襲われて悩んだり、とても深い小説だと思います。
「読む気をそがれた」発言をされた方はきっと、まだ1型糖尿病による本当の苦しみを味わっていらっしゃらないのだと思います。
私は図書館で借りて読んだのですが、1度読んだだけではまだつかみきれない何かがありそうなので、近々購入しようと思っています♪

投稿: mimi | 2011年12月 2日 (金) 19時33分

mimiさん>

はじめまして!そしてコメントありがとうございます!!

私がこの本のいいと思うところは、よくありがちな“難病を抱えているヒロインの切ない恋愛小説”ではないところです。文字通り、ヒロインは難病をかかえているし、読んだ後にとても切なくなる恋愛小説なのですが、、、私の表現力ではなんとも説明できません。

私はこの本を読むまで、1型糖尿病のことを知りませんでした。。。日本ではこの病気に関する遅れていると聞きましたが、今私が住んでいるイギリスでも耳にしたことがありません。

この本の話題からそれますが、村上龍さんが編集長をしているJMMというメールマガジンはご存知でしょうか?
そのJMMで先月から日本IDDMネットワーク理事長の井上龍夫さんという方のエッセイが新連載されています。タイトルは『「治らない」から「治る」へ』です。ご存知なくてもしも興味がおありでしたら、バックナンバーが以下のURLで読めますよ。

http://ryumurakami.jmm.co.jp/dynamic/report/title31_1.html

投稿: mico | 2011年12月 2日 (金) 21時20分

micoさん♪

お返事ありがとうございます!
JMMのメルマガ、私も配信してもらっています(^^)

完治の方法を研究してくださっている方々の努力はありがたいのですが、インスリンフリーになるとされる膵島移植は問題アリアリなのです。
日本で移植手術を受けた患者は時間の経過とともに新しい膵島も壊れ、結局インスリン注射に戻りました。
また、移植を受けたら毎日免疫抑制剤を服用する必要があり、その薬が自分の免疫を押さえ込むため、様々な病気に感染することが多いそうです。セーターを着ただけで毛の当たる部分が化膿してきたり……。
それと移植に関する医療は保険適用外のため、免疫抑制剤だけで毎月30万円近くかかるそうな(ため息)。
移植チームは多くの患者に実施してみたいでしょうから、負の情報はひた隠しにしていますが……。

そうですか、イギリスでも一般的に「糖尿病」=「2型糖尿病」なのですね……。
この本は1型糖尿病についての教科書ではなく小説なのですから、1型生活についての細かな描写は省かれていて当然で、一般の読者に飽きさせないで読ませるよう、工夫されていると思います。
この本を私が5月に図書館で予約した時点で、すでに100番目くらいでした!
そしてやっと借りてきたら
「この資料は後に多くの方が待っていますので、できるだけ早い返却をお願いします」
と書かれた栞がはさまっていました\(◎o◎)/!
一体どれくらいの方が読まれるのか想像もできませんが、人気作家さんが1型糖尿病について書いてくださったことは本当に有難く、意味のあることだと思います。

投稿: mimi | 2011年12月 3日 (土) 05時23分

>mimiさん

メルマガのことはご存知だったんですね!
私は1回の配信分が長くて読まずに削除するものが多いのですが、普段の生活では目にとめないような内容のものばかりなので、読むとちょっと勉強した後の達成感みたいなものを感じます。

1型糖尿病に限らず、医療においての研究って対象が人体で命に関わることだから、劇的に進むっていうようなものではないのでしょうね。
mimiさんのコメントを読むだけで本当にため息がでてしまいました。

イギリスでは政府管轄の医療機関を使う場合医療費が無料なので、長期にわたる治療が必要な病気にかかった場合でも個人負担は薬代だけで済みます。いろいろ問題はあるものの、お金がないから病院にいけないということがないのはいいところだと思っています。

図書館で100人近くも予約がある本があるんですね!人気のある本って、大抵そういうものなのかな。
私は本を読むのが遅いので、自分の後に待っている人がいると思っただけでじっくり読めなくなりそうです。

前にも書きましたが、この本を読まなければ私は1型糖尿病の存在すら知らなかったので、mimiさんが書いている通り、私も村上龍さんがこの本を書いたことはとても意味のあることだと思います。

投稿: mico | 2011年12月 4日 (日) 21時02分

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